SSTの具体的な実践例|現場で行っている内容
「SSTって具体的に何をするの?」放課後等デイサービスの活動内容に悩む保護者の方へ

「放課後等デイサービスでSST(ソーシャルスキルトレーニング)が大切だと聞くけれど、一体どんなことをするのか具体的にはよくわからない…」
「うちの子は、集団での活動に馴染めるだろうか?」
大切なお子さまのことだからこそ、そんな風に疑問や不安を感じていらっしゃる保護者の方も多いのではないでしょうか。
SSTは、お子さまが社会の中で他の人たちと円滑な人間関係を築き、自分らしく過ごしていくための大切なスキルを育むトレーニングです。しかし、決して堅苦しい「お勉強」ではありません。ゲームやごっこ遊び(ロールプレイング)などを通じて、楽しみながら自然とコミュニケーションのコツを学んでいけるように工夫されています。
この記事では、放課後等デイサービスで行われているSSTの具体的な活動内容を、分かりやすくご紹介します。読み終える頃には、お子さまが笑顔で活動に参加し、少しずつ成長していく姿がきっと具体的にイメージできるはずです。
まずは基本から|SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?

SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、一言でいうと「人とうまく関わるための練習」のことです。日常生活の中では、お友達と遊んだり、先生と話したり、何かをお願いしたりと、人と関わる場面がたくさんあります。SSTでは、そうした様々な場面で必要になるスキルを、遊びや簡単な課題などを通じて楽しく学んでいきます。
SSTで学ぶスキルの例としては、以下のようなものがあります。
- 自分の気持ちを上手に言葉で伝える
- 相手の話を最後まで聞く、相槌をうつ
- お友達と仲良く遊ぶためのルールを守る
- 困ったときに「手伝って」「教えて」とお願いする
- 嬉しい、悲しいといった感情を適切に表現する
こうした練習の目的は、単にスキルを身につけることだけではありません。人との関わりが上手になることで自信がつき、自己肯定感を高めること、そして集団生活の中で楽しく過ごせる社会性を育むことが大きなねらいです。特に放課後等デイサービスは、学校とは違うリラックスした雰囲気の中、専門のスタッフに見守られながら実践的な練習ができるため、SSTを行うのに最適な環境と言えます。
【実践例①】ロールプレイで学ぶ「こんなとき、どうする?」
ソーシャルスキルトレーニング(SST)で中心となる活動の一つが「ロールプレイ(役割演技)」です。子どもたちが日常生活や学校生活で実際に遭遇しそうな「困った場面」を具体的に設定し、どうすればうまくいくかを実際に演じながら練習します。頭で理解するだけでなく、体を使って練習することで、いざという時に自然と適切な行動がとれるようになることを目指します。
ここでは、ロールプレイでよく取り上げられる3つの場面と、練習の進め方について具体的にご紹介します。
場面①:おもちゃを「貸して」と伝える練習
お友達が使っているおもちゃで遊びたいけれど、どう声をかければいいかわからない、という場面はよくあります。いきなり奪ってしまったり、黙って諦めてしまったりするのではなく、言葉で伝える練習をします。
- 状況設定:お友達が楽しそうにブロックで遊んでいます。自分もそのブロックで遊びたいです。
- 練習のポイント:まずは「楽しそうだね」「すごいね」と相手の遊びに興味があることを伝えます。そのうえで、「終わったら貸してくれる?」や「少しだけ使ってもいい?」と丁寧に頼む練習をします。相手の状況を考え、すぐに貸してもらえなくても怒らない、といった練習も大切です。
場面②:遊びの輪に「入れて」と伝える練習
みんなが楽しそうに遊んでいる輪の中に入りたいけれど、勇気が出ずに一人で見てしまう。そんな子どものための練習です。
- 状況設定:数人のお友達が、鬼ごっこをして楽しそうに遊んでいます。
- 練習のポイント:遠くから見ているだけでなく、まずは近くに行ってみることから始めます。そして、「楽しそうだね!」「私も一緒に混ぜてほしいな」と声をかける練習をします。もし「今はダメ」と断られても、それは自分が嫌われているわけではないこと、また別の機会があることを学び、気持ちを切り替える練習も行います。
場面③:嫌なことを「やめて」と伝える練習
自分の気持ちを伝えるのが苦手な子どもにとって、「断る」ことはとても難しいスキルです。相手を傷つけずに、自分の気持ちをはっきりと伝える練習をします。
- 状況設定:お友達から、自分が嫌だと感じるあだ名で呼ばれたり、軽く叩かれたりしました。
- 練習のポイント:感情的になって怒ったり、泣いてしまったりするのではなく、「そういう風に呼ばれるのは嫌な気持ちになるから、やめてほしいな」と冷静に伝える練習をします。「I(アイ)メッセージ」と呼ばれる、「私はこう感じる」という伝え方が基本です。自分の気持ちを正直に伝えることで、相手との良好な関係を保ちながら自己主張ができるようになります。
ロールプレイの基本的な流れ
ロールプレイは、主に次の3つのステップで進められます。この流れを繰り返すことで、子どもたちは少しずつスキルを身につけていきます。
- スタッフがお手本を見せる(モデリング):まず、スタッフが良い例と、時には悪い例を演じて見せます。子どもたちはそれを見ることで、具体的な行動のイメージを掴みます。
- 子どもが挑戦する(リハーサル):次はいよいよ子どもの番です。スタッフや他のお友達を相手役に、さきほど見たお手本を真似して実際に演じてみます。最初はうまくできなくても大丈夫です。
- みんなで褒める(フィードバック):挑戦した後は、良かったところを具体的に褒めます。「勇気を出して声がかけられたね」「はっきり言えてかっこよかったよ」など、頑張りを認めることで、子どもの自信と次への意欲を引き出します。
ロールプレイの一番大切な目的は、失敗しても大丈夫な安全な環境で、たくさんの「できた!」という成功体験を積むことです。練習でうまくいった経験が、子どもたちの自信を育み、実際の生活で一歩踏み出す勇気へとつながっていきます。
【実践例②】ゲームで楽しく身につけるコミュニケーション

子どもにとって、遊びは学びそのものです。特にコミュニケーションスキルを育むSST(ソーシャルスキルトレーニング)では、ゲームを取り入れることで、子どもたちは楽しみながら自然と大切なスキルを身につけることができます。「勉強」と構えるのではなく、「楽しい遊び」の中から学ぶことで、子どもたちの挑戦したいという意欲を最大限に引き出すことができるのです。ここでは、現場でも人気のあるゲームとそのねらいをいくつかご紹介します。
1. 感情カードゲーム
これは「うれしい」「かなしい」「おこっている」といった様々な感情が描かれたカードを使うゲームです。カードを引いてその表情を真似てみたり、「どんな時にこんな気持ちになるかな?」とみんなで話し合ったりします。このゲームを通して、子どもたちは自分の気持ちを言葉で表現する練習や、相手の表情から気持ちを読み取る練習をすることができます。語彙が増え、自己理解と他者理解が深まります。
2. 協力ボードゲーム
一般的なゲームは勝ち負けを競いますが、協力ゲームは参加者全員でひとつの目標に向かって力を合わせるのが特徴です。例えば、全員で相談しながらコマを進めるボードゲームや、力を合わせて何かを組み立てるブロックゲームなどがあります。このゲームでは、自分の意見を言うだけでなく、友達の意見を聞くこと、役割分担をすること、そして目標を達成した時の喜びを分かち合うことなど、協調性を育む上で欠かせない経験ができます。
3. 伝言ゲーム・ジェスチャーゲーム
定番の遊びですが、コミュニケーションスキルを育むのに非常に効果的です。お題を正確に次の人に伝えるためには、相手の話を集中して聞く力(傾聴力)と、相手に分かりやすく伝えようと工夫する力(表現力)の両方が必要になります。言葉だけでなく、身振り手振りも使うことで、非言語的なコミュニケーションの大切さも学ぶことができます。
これらのゲームには、ソーシャルスキルを育むための様々な要素が詰まっています。具体的には、以下のようなスキルが自然と身についていきます。
- ルールを理解して守ること
- 自分の順番を待つ忍耐力
- 勝っても驕らず、負けても相手を称える気持ち
- 友達と協力して目標を達成する喜び
- 自分の考えを伝え、相手の意見を聞く対話力
何よりも大切なのは、子ども自身が「楽しい!」と感じることです。そのポジティブな気持ちが、新しいスキルを身につけ、また挑戦してみようという原動力になります。ご家庭や支援の現場で、ぜひ色々なゲームを試してみてください。
【実践例③】共同作業で育む「協力する力」

一人で黙々と作業に集中する時間も大切ですが、お友達と力を合わせて一つのものを作り上げる「共同作業」は、協力する力を育むための素晴らしいSST(ソーシャルスキルトレーニング)になります。一人ではできないことも、みんなでやればできるようになる。その喜びと達成感は、子どもにとってかけがえのない経験です。
共同作業のテーマは、子どもたちが「楽しそう!」と思えるものなら何でも構いません。いくつか具体的な活動例をご紹介します。
- おやつ作り:ホットケーキやフルーツポンチなど、簡単な調理は共同作業にぴったりです。卵を割る係、混ぜる係、盛り付ける係など、自然と役割分担が生まれます。「次はどうするんだっけ?」と教え合ったり、困っている子に「手伝おうか?」と声をかけたりする、温かいコミュニケーションの機会になります。
- 作品制作:大きな模造紙にみんなで絵を描いたり、季節の壁面飾りを作ったりするのもおすすめです。「ここに太陽を描こうよ」「お花は赤色がいいな」など、お互いの意見を出し合い、一つの作品を完成させていく過程で、他者の考えを受け入れる力や、自分の意見を伝える力が育まれます。
- イベントの準備:お誕生日会やクリスマス会など、イベントの準備も絶好の機会です。部屋の飾りつけをしたり、プログラムを考えたりする中で、「報告・連絡・相談」といった、社会で必要となる基本的なコミュニケーションスキルを楽しみながら学ぶことができます。
共同作業の大切なポイントは、結果だけでなくプロセスを褒めることです。「みんなで力を合わせたから、こんなに素敵な飾りができたね」「〇〇ちゃんが手伝ってくれたから、早く終わったね」といった声かけを通して、子どもたちは協力することの素晴らしさを実感します。仲間と一緒に何かを成し遂げたという成功体験は、子どもの自己肯定感を高め、「このグループにいると安心する」という集団への所属意識にも繋がっていくでしょう。
SSTがお子さまにもたらす嬉しい変化

SST(ソーシャルスキルトレーニング)を続けることで、お子さまの内面にはたくさんの嬉しい変化が訪れます。最初は小さな一歩かもしれませんが、その積み重ねがお子さまの大きな自信と成長につながります。ここでは、保護者の方が特に実感しやすい3つの変化についてご紹介します。
- 自己肯定感が高まります
SSTでは「できた!」という小さな成功体験をたくさん積むことができます。自分の気持ちや考えを上手に伝えられるようになると、「自分の意見を言っても大丈夫なんだ」という安心感が生まれ、自信につながります。自分に自信が持てるようになると、これまで苦手だったことや新しいことにも積極的にチャレンジする意欲が育ちます。 - お友達との関係がスムーズになります
SSTを通して、相手の気持ちを想像したり、自分の思いを適切な言葉で伝えたりする練習をします。これにより、お友達と仲良く遊べる時間が増え、ささいなことから起こるトラブルが減っていきます。もしトラブルになっても、「どうすればいいかな?」と感情的にならずに自分で解決しようとする力が身につきます。 - 気持ちのコントロールが上手になります
SSTでは、嬉しい、悲しい、悔しいといった自分の感情に気づき、それをどう扱えば良いかを学びます。自分の気持ちと上手に付き合えるようになると、嫌なことがあってもパニックにならずに気持ちを切り替えられるようになります。感情の波に振り回されることが減り、毎日を穏やかに過ごせる時間が増えるでしょう。
このように、SSTはお子さまが社会の中で自分らしく、のびのびと過ごしていくための大切な土台を築きます。
まとめ:お子さまに合ったSSTで、自信を育む一歩を

この記事では、放課後等デイサービスなどで行われているSST(ソーシャルスキルトレーニング)について、その目的や具体的な内容をご紹介しました。SSTは、難しい勉強や厳しい訓練ではなく、ロールプレイングやゲームといった楽しい活動を通じて、自然に社会性を身につけていくためのプログラムです。
SSTの最大の目的は、お子さまが「できた!」という小さな成功体験を積み重ね、自分に自信を持つことです。その自信が自己肯定感を育み、お友達とのコミュニケーションを円滑にし、集団生活での困難を乗り越える力となります。お子さまが社会でいきいきと自分らしく過ごしていくための、大切な土台作りといえるでしょう。
重要なのは、お子さま一人ひとりの個性や発達のペースに合わせたSSTを選ぶことです。お子さまが安心して、楽しみながら参加できる環境を見つけることが、成長への大きな一歩につながります。
私たちの放課後等デイサービスでは、お子さま一人ひとりの発達段階や特性に合わせたSSTプログラムをご用意しています。ご興味のある方は、ぜひ一度、見学相談会にお越しください。専門のスタッフがお話を伺います。

